アタシのこと、みんな「バケモノ」って呼ぶんだ。こんな糞女子高に入ったのがマチガイだったのよ。そりゃあ、中学の頃はそれなりにベンキョーもしたわ。塾も行ってたし、ピアノもやってた、バレー部もがんばって、それで今の糞女子高の偏差値にまで登りつめたワケ。でもナニ?校門じゃいっつもスケベ面した校長がアタシの胸のあたりジロジロ見てくるし、中庭にはカビ臭いマリア像とか立ってるし、教卓の上には「地の塩 世の光」とかウザイ言葉がぴっかぴかの額縁に入れられて飾れられてるし、週に三度も宗教科とかいうバッカみたいな授業があるし、それで「東大」「京大」行きましょう?アナタタチ崇高ナル頭脳ヲ備エタ淑女一同ハ日本ノ将来ノ為ニソノ優秀ナル頭脳ヲ還元シマショウって、アンタなにさま?なんかムシャクシャして一日フケたら次の日担任がビンタ、「無断欠席ガ許サレルト思ッテイルノ?」だからアタシがムカついて、「はぁ?っていうか辞めたきゃ勝手に辞めれるのが高校の利点だろうが?」っていったら、厳重ランクの停学処分。そのことをウチの豚ママに話したら、「アンタの態度が全部原因でしょ?ママにあたらないでくれない?」って、関心皆無。ただでさえ子供の面倒みるのが死ぬほどウザイらしい豚パパにも話したら、「そうか」の一言。根暗でヒキコモリの蛆虫兄貴にも声をかけたけど、「黙れ」で扉をバッタン!閉めちゃって、また糞の役にも立たない小説とやらに逃避。ナニ?うちの家族って腐ってるのかな。そもそもの発端は女子トイレでアタシがアイシャドー落としてた日にまで遡るの。偶然入ってきた優等生三人組み(しかもコイツラ三人セットして便所で毎日レズってるの、信じられる?)がアタシを一瞥して、小声で「死ネ」。アタシがブチ切れて、「はぁ?おまえが死ねばぁー?」って懇切丁寧に返礼しますと、この豚レズトリオ「なんかイカ臭くない?」これを耳にした時アタシ思わず、それはオマエラだろぉ?っていいかけたけど、ガマンして無視したの。それじゃあ次の日からどうなったかって?クラスメイト全員アタシを無視、おまけに陰で「バケモノ」とか渾名つけてクス・クス笑ってくれちゃってるの、信じられる?これが聖母マリアのような乙女を教育理念にしたガッコー?ほんと、この世界って腐ってるのね。ウワサは他の教室にも感染、アタシが男のペニス十本は咥えたツワモノだとか、モデルのオーディションに落ちて逆にAVに出たとか、根も葉もない呆けたガセネタで終始笑い合ってはこっちを嘲りの眼でチラチラ見るワケ。そういう頭が沸点状態のときに、担任のあの一言。ホント、あんな腐った勉強狂いのレズドモがウジャウジャしてるガッコー、他にある?あまりにも頭の中のダイナマイトが爆発してしょうがないから、停学中オカマイなしで私服で学校に入ってキリスト像に赤ペンキぶちまけたら、偶然生徒指導のカス男に見つかって、三時間拷問的な叱咤+ビンタ、挙句退学処分だって。まあでも別にこれでいいのよ。アタシはあそこの校風に馴染まなかったってだけのハナシ。つまらないでしょ、こんなハナシ?アタシのハナシっていっつもつまらないっていわれるの。まあ、アタシって人間の脳味噌が糞マミレで腐ってるからどうしようもナイんだけどネ。
ガッコー辞めさせられたことには豚パパ+豚ママもショックだったみたい。でもニ、三日したらケロッとして、完全にアタシを空気扱い。根暗兄貴にいたっては……、もう話すのもウザイからカットします。するコトないから電車でナンパしてきた若いイケメン風(?)のサラリーマンのケータイに連絡して、「遊べる日」を指定、数分後には返信が来て、「どのホテルにしよっか?」だって。男とヤルのはこれが五、六回目だったから別にキンチョーとかはしなかったんだけど、さすがに「どんな顔だっけ?」ってナンパしてきた時のソイツのツラがボヤけてるのも自覚してたワケよ。まあ男なんて、でっかいチンポがついてたらそれでいいから、とにかく全部あのキモい陰キャラどもの巣窟に関する記憶をブッ壊したかったの。その日はかなり気合入ったファッションだったかな、スカートもかなり短かったかもしんない。ラヴホの前で待ち合わせ。仕事帰りみたいで、背広でまあそれなりにカッコイイ男が笑顔ふりまいて走ってきたわ。ソッコー部屋でイッショにシャワー浴びて、そのままキスしながらベッドに転がり落ちたの。ナニしたんだっけな、まあほとんど衝動に委ねてたから今じゃあんま憶えてないんだけど、後でフェラテクを褒めてくれたのにはチョッピリうれしかったかもしんない。そう、その頃だったわ、チューハイ回し飲みしながら、いきなりコイツがアタシにこういったのよ。
――あぁ、本当に最高のマンコだったよ。×××ちゃん。イソギンチャクみたいに絡みついたなぁ!俺のチンポも死ぬほどウレシがってたよ。なぁ、いきなりだけどさ、AV出てみるのとかには興味ある?
アタシ、別にそこまでチンポが欲しいワケでもなかったし、軽いノリでこういったわ。
――エロビデでしょ?あー、そういうのダルイ。
それじゃあこの男、今度は急に黙りこんで、ケッコンの話持ち出すキマジメさんみたいに、深々と考え込んでるのよね。でも、すぐにアタシが訝しげにしてるコトにきづいたらしくて、あのオンナうけしやすそうな笑顔をうかべたワケ。
――じゃあさ、Snuffとかに関心あるかな?
それを聴いてアタシ、はぁ?って顔をしたんだろうけど、男は男で、微笑を絶やさずにアタシの乳首をいじりながら、やっぱりその「Snuff」に関して、なにかイイタゲだったの。アタシは一般常識っていうか、映画かなにかで殺人ヴィデオのことを「Snuff」とか呼んでるのを憶えてたんだけど。そこで、こんなふうに返答してみたの。
――あぁー、スナッフ?うん、興味あるよぉ。
――ウッソ!マジで?
――うん、アレだよね、女の子かナンカをトンカチでブン殴ったりして、殺すまでを撮影したフィルムでしょ?
――そうそうっ!さっすが日本でも有数の進学校だっただけあるなぁ!
――それ、ホメ言葉じゃナクナイ?でもSnuffってほとんど都市伝説みたいなモノじゃないノぉ?
――いや、市場化してるヤツの大半はガセだよ。ってか、マジなら誘うワケないじゃん?でもさ、一回出てみない?ガセの演出で本物に見せかけるヤツ。×××ちゃんカワイイしさ、きっと殺人死体マニアドモのズリネタ女王になれるよ!
――えぇー。なんかヤバクナイ?
――平気平気!ぜんっぜん!アレだよ、アレ。報酬とかほとんどAVの素人の出演料完全に越えてるしさ、スッパダカで縄で縛られて、ナイフとかペンチとかで内臓エグられたりするだけだから!
――へぇー。乳首とかペンチで引き千切るワケ?
――もちろん演出だけどね!そのへんは編集とかいるし、心配することはないかな!殺されるのはヴィデオの中だけってことさ!
――いーよ。っていうか、ヒマだし。バイト感覚でやるわ。見積もりでドンクライ?
――んっ?ギャラ?
――そそ。
――そうだなぁ。「ハマリ役」だってわかったら、一本につき80万くらいかなぁ。
――キマリ。で、いつなの?
三日後、彼からメールで「撮影場所」のアドレスが送られてきたわ。もちろん、アタシもちょい怖かったんだケド、まあ向こうも演出とかほざいてるし、あんまり考えないようにしてたワケ。撮影日はメール受信して、また三日後だったわ。場所はけっこう遠くて、乗り換え含めて電車で一時間半+バス二十分ちょいかな。かなり古い工場跡地で、遠山製紙パルプ工場って表札に亀裂まで入ってる筋金入りの廃墟。周囲は雑木林みたいでキミ悪いんだけど、まあ夏だし、蝉の声がそういうの掻き消してくれてるような気もしてたわ。茂みの奥にガタガタにイガんだ鳥居がポッツンって立ってて、そこになんか知んないけど、大量のポルノ雑誌が捨ててあった。アタシ、いわれたとおりずっと工場の中の機械類の近くに腰かけてタバコ吸ってたの。何分くらい待ったかな、タブン二十分くらい。白いフツーのワゴン車が一台下の街から伸びた車道から上がってきたの。アタシ、ちょっと緊張して、フロントガラス越しに運転してるヤカラの面を確かめようとしたわ。もしヤクザ系だったりしたら、裏手から一目散にバス停の方へ走り去るつもりだったもん。でも、中の様子がわかんない黒いガラスってあるでしょ、アレだったのよね。まあ、とりあえず工場の中のちょっとした置物の近くに身を潜めて、ガラスのない四角い穴から、外の様子をうかがってたわ、アタシ。そしたら別にヤバそうな感じの人じゃなくて、四人組のフツーな男女がワゴンから笑いながら出てきたのよね。男三、女一、別にパッと見た感じマジメそうっていうか(こういうのが一番ヤバイとか?)、ホント業務的にエロビデ撮ってマス!って感じのワキアイアイしたヤカラだったの。でもこの四人の中に、あのアタシのフェラ四十五秒で昇天した男はいなくって、ちょっとそれが気がかりだったわ。なぜって、連絡してきてたのはアイツだし。でもまあ別に仕事だって割りきってるから、別に誰が来ようと金と命の保障さえあるんなら別にいーんですケド。そういう感じで、警戒心ってヤツを殺がれちゃって、アタシゆっくりヤカラの前に歩み出たってワケ。そしたら、リーダー格みたいな、ちょい太めの、丸眼鏡かけた(たぶん公務員?なんか、そんなカンジ)オッサンがアタシに一番に気付いて、気さくに話しかけてきたのよね。
――おぉ!キミだね!キミ、だよね?あの、Rから連絡もらった、×××ちゃん?そうだよね?んん?
――エット、あ、ハイ。
アタシがそう、わりと大人しめに返すと、他の連中も周りに駆け寄ってきて、ヘラヘラ笑いながらナブルようにみたの。まあその視線は別に不快な感じじゃなかったんだけど、女の顔がちょっと近くで見るとキモチワルかったかな。なんか左頬に薄いんだけど、でっかいアザがあるのよ。眼は細くて、なんか百人一首に描かれてる昔の宮廷ブス女ってカンジ。アタシとおんなじで、肌はかなり白いんだけど、ちょっと近くでこのアザは正直ヒイタわ。
――うわぁ!めっちゃカワエエなぁ!Rこんなベッピン見つけとったんか?死ぬほどタイプやわぁ!スカウトされへん?大通りとか歩いてて!
そういっていきなり丸眼鏡の前に踊り出てきたのは、ヒョロ長のヘビみたいな顔した、三十路くらいの男。バリバリの関西弁でちょっとはじめヒイタけど、この中だと一番ノリはヨサゲだったかな。アタシ、実際スカウトされたことあったし、事務所に今でも籍置いてるから、正直に答えようと思った。
――あっ、ハイ、ありますヨ。
――うわぁ!やっぱりなぁ!こんな上玉オトコが見逃すワケないもんなぁ!アカン、今R墓に入れたくなってきたわ!
ヘビ男がそういって、アタシちょっと首をかしげた。っていうか、コイツがこういうコトいいだすってことは、Rとアタシがしたこととか、アタシの特技とか、全部知ってるってことだと思ったのよ。まあ事前情報として、アタシも同じ立場だったら、どういうスタイルの女だとか、そゆこと洩らすと思うけどね。
後の一人は、めちゃくちゃ体のでっかい(190ちょい?)、なんか大道具係りってカンジのがっしりした体型のスポーツマン風のヤツ。野球帽のツバを反対側にして被ってて、笑顔は少ないんだけど、目はリスみたいにクリクリしてた。そんなふうに観察してると、やっぱりあのリーダー格の小太りが、ヘビを退かすようにして口を開いたわ。
――死に方とか聞いてたっけ?けっこう種類あるんだけど。
――エッ、いや、まだそーゆーのは全然知らないんデス。
――あー、そうなんだ。まあね、今回×××ちゃんにやってみたい殺し方ってのは、もう討論済みでね。単純にドリルとか電ノコで少しずつ腕とか、まあ脚とか、削っていくのもイイんだけどさ、もっと特別な殺人方法の方が売れるしね。
――エー、なんかコワぁい。
――はっはっ!大丈夫大丈夫!ホントに天国イッちゃうわけじゃないんだから。オジサン達もプロだしね。カメラマンとか、獣医とかもしてるヤツいるけど、普通のポルノ系もけっこう撮ってきたんだ。【FAIRY PROJECT】って聞いたことない?ブッカケとかスカトロとかゲロ、食ザー関連の、まあマニア系なんだけど、最近地下販売でSnuffやり始めてね。×××ちゃんでね、3人目なんだ。
――ヘェー。前のコはどんな死に方だったんですかぁ?
アタシがそう質問すると、今までは大道具の男の傍で地蔵みたいな存在になってた、あのアザの女が口を開いた。
――前の娘はちょっと変わった娘だったのよねぇ。火傷プレイのキチガイ版っていうかねぇ、少しずつライターで皮膚を焼かれるのが好きみたいで、だんだんエスカレートしたんだけど、ナマ火傷ができるたびに、その傷口に熱湯をかけてってウルサイのよねぇ。最後はもうmonsterっていうかねぇ、頭皮もほとんど焼け爛れちゃって、かなりヤバイ状態になったんだけどねぇ。
――うわぁー、それはナンカ加工修正がタイヘンそうですネ。
――いや、そうでもないねんなぁ、これが!と、ヘビの関西弁男がまた割り込んだ。むしろ大変やったんはガキの悲鳴だけ残して外界のノイズ除去する作業やわ。イミわかるか?×××ちゃん、ここいら無人地帯みたいやけどな、けっこう車道からの音響きよんねん。しかも時々やけど警察も巡回に来よるしなぁ。
――じゃあ悲鳴はおもうぞんぶんあげちゃってもОKってコトですよネ?
――うんうん!そうそう!さっすがぁ、よぉわかってるんやん!やっぱ臨場感がタイセツやで。マジで。
――それはそうと、死に方なんだけど、×××ちゃんのほうで何か希望とかあるかな?あれば、それも取り入れて殺してあげたいんだけど。
――んーと、特にないんですケドね、アタシは別に。
――ほんとにぃ?輪姦とかされた後で死にたくない?
――あー、じゃあソレにしよっかなぁ。ってコトはエロが最初に入るってことですヨネ?
――そうだね!初めに俺たち三人で×××ちゃんの可愛いオマンコにたっぷりスペルマぶちまけて、それからゆっくり特別な方法で殺すっていう流れ、こういうのでどう?
――ゼンゼン、オッケーです。でも、ギャラにエロの分増額ってことにしちゃっていいですかァ?
――いいよいいよぉ!そうだな、80万契約だったから、上乗せ20万でどう?破格だと思うよ。後でいっしょにヴィデオ観ようよ!きっと興奮するから!死ぬほど!
アタシは小犬みたいに首を縦に振った。実際、たかがヴィデオ一本撮るだけで百万も手に入るなんて、こんな嬉しい商売はないと思ったから。アタシが承諾書にサインして、やがてヤカラはアタシを工場二階の一室へ誘導したわ。もちろん、けっこうキンチョーしてたけど、そんなことより、三本のチンポに同時に犯されるのが、なんかキモチよさそうで早く始まってほしかったの。3Pはしたことあったけど、男一女二だったからツマンナカッタのよね。きっとアタシの口とアナルとマンコにそれぞれでっかいチンポがズボズボ出し入れされるんだろうなぁって考えると、心臓がドクンドクン高鳴ったわ。その部屋はちょっとカビ臭くて、おまけに天井の隅にはクモの巣が張ってたキタナイ場所だったわ。でも、部屋の真ん中に中くらいのベッドが置いてあって、窓にはカーテンがかけられてるのよね。その窓の近くには錆び付いたパイプ椅子があったわ。もちろんベッドはキレイで、新品っぽかった。「じゃあ、脱いでみようね?」っていうリーダーの男の声がして、アタシ脱ぎ始めたわ。脱ぎ終わるまで、椅子に座ったあのアザ女が、カメラでアタシを何枚も撮ってたけど、別に気にしなかった。だって、たぶんこれもギャラに入ってる気がしたし、仕事だって割り切ってたからね。「靴下だけは脱がないで」っていわれたわ。それ以外は脱いだわけだけど、裸のアタシにヘビ男が黒いガーターとやっぱり真っ黒の網タイツを渡して、「これも付けてみよか?」だって。いわれたとおりにして、アタシ、ベッドに横になったわ。もちろん、アザ女はもうとっくにヴィデオ撮影を始めてて、カメラとは別にそれに気を配っているのよ。男たちもそれぞれ服を脱ぎ出して、やがてアタシ一人が横になったベッドに三人いっしょに這い上がってきたわ。その後はポルノとかでよく観る、いわゆるサンドイッチ状態にして交互にマンコに射精していくヤツ。(コンドームは使ってるけど)ヘビ男がアタシの乳房をしゃぶり回してる時は、マンコは大道具のチンポが入ってて、アナルにはリーダーの男のが入ってる、後はシャッフルで交替していくってカンジかな。アタシが声出すと、アザ女が撮影機器片手に「イイワヨォ!スッゴイワァ!イイワヨォ!」のくり返し。もちろん、アタシも負けずにフェラとかパイズリで応戦するんだけど、さすがにペニス三本相手にするには体力不足で、全員とマンコでズッコンバッコンした後は、長距離ランナーの完走直後みたいにヘナヘナになってたわ。全員汗まみれで、部屋の中もモノスゴイ臭いになってたと思う。それで、アザ女が一度ヴィデオを切って、「少し休みましょう」っていって、ワゴンから缶珈琲を運んできてくれたの。アタシがそれを飲んでる間に、大道具の男もワゴンに戻って、後からなんかオドロオドロしい大きい鞄を抱えて来たわ。たぶん演出用の拷問器具が入ってるんだろうと思ってたけど、ちょっとやっぱり怖いじゃん?アタシ、大道具の男にこう自分を安心させるイミで質問してみたのよ。
――あのォ、それって全部ホンモノじゃないんですよネ?
アタシがそういうと、大道具の男はウッ?とだけ馬鹿みたいに叫んで、眼を丸くしながらコッチをみたの。アタシ、この男がセックス中もほとんど声を出してなかったことが不思議だったんだけど、今の反応でなんか病気みたいな気がしたワケ。
――あー、×××ちゃん、すまんなぁ。ソイツ、最近自分が殺す相手とは話さんっていう、まあアル種の強迫観念にとりつかれとるねんやわ。カンニンしたって。
――あっ、そうなんだぁ。
でも、ヘビ男にそう返答されても、アタシは何かが心残りだった。この気持ち悪いほどデコボコした黒い大きな袋に入っている拷問器具は、全部ニセモノなのだろうか?もしホンモノだとしたら、それを使ってどう撮影するんだろう?血糊とかの用意は?もちろん、画像の特殊効果とかナントカで、腕を切断させたり、足をもぎ取ったりするんだよね?アタシはそう自分自身に、なんかマジで必死に問い詰めて、「ホントに天国イッちゃうわけじゃないんだから」と、初めにいったリーダーの男の言葉を引きずり上げて不安を取り払おうとした。でも、やっぱりそれも本当かどうかわかんない。もしかしたらRもアタシを実際に殺すつもりでコイツラに紹介したのかもしれないし、コイツラがさっきから「殺し方なんだけど」とか、「悲鳴がうるさいからなぁ」とか、「前の娘が死んだときは」とかいってるのは、もしかしたら本当にマジで、アタシをコロス台詞として使っているのかもしれない。でも、そんなことをしたら、コイツラも破滅だし、日本の警察からそうヤスヤスと逃げ切れるわけないわよね。プロのカメラマンだとか、獣医だとかがたとえウソでも、コイツラにはきっとそれぞれ家庭があって、ちょっと悪趣味なシゴトとして、こういうのをやっているんじゃないのかなって思うもの。もしも自殺サイトみたいなカンジで出会った連中が、どうせ死ぬならスナッフを残して死のう、みたいな狂ったノリでアタシを選び出したのなら、もうアタシはここで殺されるしかないケド。でも、コイツラなんかけっこう楽しそうだし、今から死にますってツラじゃなかったのよ。ヘンに元気っていうか、あくまで業務的なのよね。まあその態度に逆に慰められる、みたいなカンジで、アタシ、もうあれこれ考えないことにしたんだケド。
――じゃあ×××ちゃん、そろそろ本番イコっか?
――あっ、ハイ。おねがいしマス。
――遺言とか別にないよね?
――えっ、えっと、エンシュツですよね?
アタシが思わずそう問い返すと、リーダーの男は質問には答えず、アザの女の方を向いたわ。
――あー、もうカメラ回しちゃって!って、男が一声あげると、アザの女も明るい声で「ОK」って叫んで、撮影機器を持ち上げるの。
――あ、ゴメンゴメン。それで、なんだって?
――エッ、いや、ていうかイショって?
――あー、もちろん演出だよエンシュツ!でもまあ、リアルっぽくヤリたいから、できるだけそれっぽく書いて欲しいんだよねぇ。もう身も心も命までも売る覚悟はデキテマス!みたいな涙グマシイかんじのヤツさぁ!
アタシ初めに承諾書も書いてたし、面倒だから、遠回しに拒んだけど、ヘビの男が逆にこういい出したの。
――じゃあ口頭で伝えるっちゅうスタイルにせえへんかぁ?俺が×××ちゃんに質問して、ヤバイ方向に追い込んでいくから、できるだけ憂鬱っぽく返答してくれへんかいな?
――んっとぉ、ヤバイ方向っていうのはどういうのですかぁ?
――そりゃ決まっとるやないかぁ!自殺させるように誘導する暴言罵声中傷蹂躙やわぁ!
――あー、ナルホドねぇ。
アタシはそう作り笑いして相槌を打ったんだけど、正直チョットうざくなってきていた。たんにドリルとかで頭ブチ抜いて殺すようなのじゃなくて、じっくり精神的にも肉体的にも追い込んで嬲殺しにするタイプのスナッフみたい。まあ手の込んでるぶん、ギャラは高いから文句はいわないけど、演技とかあんま得意でもないし、ユーウツなキャラ演じるとかできるかなぁってちょっと不安だったの。しばらくして、ヘビの男以外の男二人は壁側に移動しちゃって、アタシはベッドでヘビの男と二人で座りあってた。前にはアザ女が撮影ヴィデオ構えながらアタシを映してたわ。ヘビ男とアタシのムナシー問答が始まったワケよ。最初は別に、ただ学校とか家庭とか、セックスのこととか、そういうありふれたコトを話題にしてたカナ。でも、なんかコイツだんだん過激になってきたのよね。なんていうか、マジで頭のネジがフッ飛んでるみたいな顔しながら、マシンガントークでキチガイ系の台詞を吐き始めたワケ。まあアタシはヘビ男も演技してるってわかってたから、別にこっちも演技でタイショするつもりだったんだけど、なんかノリがマジっぽくてさ、正直コワかったわ。
――ほんまっ、オマエくだらん人間やなぁ!殺したくてたまらんわぁ!ちょっとレヴェルが高い進学校に入ったくらいでウレシガットルんかぁ?しょうもない自己愛やなぁ!自分はキャピキャピの女子高生で、コトバもアホみたいなノリやけど、頭はそこらのマンコだけついとるようなボンクラの糞餓鬼とはチガウネンデーみたいなカンジか?んん?オマエみたいな人間のクズは学校からも社会からもハミゴにされて、けっきょくヤクザの売女になっていきよんねん!オラ、もう一回さっきみたいにバキュームフェラしてくれや?ごっつキモチヨカッタぞ、おまえのムシャブリつきかた!オラァ!はよヤレや、キチガイ女!
こんなふうにヘビ男が吐き散らしてくるから、アタシはアタシでやっぱり自殺ガンボーある女子高生みたいなキャラを演じるワケよ。
――レイプもしてください。フェラもシマス。もう生きるのがツラクて、殺してほしいんデス。
――ウソじゃ、ボケッ!オマエみたいなブッサイクな女のマンコだれが犯すか!勘違いしとんちゃうぞ?あぁ?自意識過剰なんじゃこの糞餓鬼がっ!スカウトされて事務所がどうのって、オマエみたいなケバい餓鬼が呼ばれるジムショゆーたら素人ポルノ企画くらいやんけ?おお?殺したるから覚悟せぇよ!フツウには殺さんぞ?ゆっくりゆっくり悲鳴あげさせたるわ。
まあこんなかんじでしばらくブッ飛んだ問答してたんだけど、そのうちコイツ、なんかもうイミわかんないコトほざき出したのよね。こういう話を壁でスマシ顔して平然とみつめてる男二人もどうかと思ったんだけどサ。
――おまえなぁ、共産党なめたらアカンぞ?俺は18で入党して以来ずっとアナクロって笑われてきた極左の党員なんじゃ!今女帝の皇位継承で政界ぐるみモメとるやろぉ?あんなんこの俺が内親王の首ブッタ斬って一発で終わらしたるわっ!一回でもエエから皇居を血の海にすんのが俺の夢なんじゃ!オマエ、俺がキチガイとか思うなよ?オマエにもエエもんみせたるからなァ!南京大虐殺の写真集じゃ、これでシナのクズどものマンコをグリグリえぐっとる写真をオマエに強制的にみせたるからなッ!瞼に針金とおして眼そむけられへんようにしてなぁ!原爆症患者の写真もオモロイぞ?俺なんか背中がマッカッカになって泣き叫んどる被爆のガキをレイプする妄想しながら自涜したわっ!爆心地が俺のチンポの臭いで塗れるんじゃっ!天皇は死んだほうがエエ!あいつらの一族はまだ戦争責任つぐなっとらんわっ!糞ヒロヒトは植物とかに逃げとった場合かい、アホンダラぁ!
アタシ思わず下を向いて笑ったわ。「シナのクズどものマンコをグリグリえぐっとる写真をオマエに強制的にみせたる」とかいってるバカなヤカラが、「天皇の戦争責任」とかいい出したことがオカシクて。たぶん、天皇とか、極左とか、原爆とか、そういう言葉になんか精神をハイにされる面がこの男にはあるんだろうと思った。ただ、その表現のしかたが、あまりにも「狙いスギ」っていうか、いかにも「キチガイやってます!」みたいなノリで、正直ダサイと思った。でも、アタシはそこまで考えて、コイツが演技してるってコトをいつのまにか忘れてた自分に気付いたのよ。たぶん、この男はヴィデオを観る人たちに向けて、なにかインパクトのある、ファナティクっていうか、そういう演技を無理にしてるんだろうって思い直したワケ。よくよくみたら、コイツも必死に叫んでるワケで、アタシもそれなら、必死でジサツ大好き女子高生を演じなきゃって思ったわ。
――コロシてくださいっ!もう生きたくないんデス!お願いっ!
アタシがそう叫んだ時だった。リーダー格の男が壁からムクッて身を乗り出して、アザの女にヴィデオを切るように合図したの。アタシとヘビ男はポカーンとしながら、リーダーの方を眺めてるワケ。
――ごめんね、×××ちゃん。せっかくイイ演技してくれてるのに。んっとねぇ、やっぱり今撮影風景みててね、殺される娘は「生きたい意志」を持ってる方がクル気がしたんだよ。
――あー、私も同感、とアザの女もヴィデオから顔を傾けながらアタシたちにいった。やっぱり「生きたい意志」を挫くことに観る側は快感を得るワケなのよねぇ。
――そうそう、だからさ、×××ちゃん、悪いんだけど、「殺されたいキャラ」から、「殺されたくないキャラ」にチェンジしてもらえないかなぁ!ゴメンネ、いきなり割り込んじゃって。まあ商品価値を高めるってコトで。
――あっ、わかりましたぁ。アタシは別にいいですヨ。でも、ムズカシそぉ。
アタシがそうリーダーの男にいうと、ヘビの男がいきなり口を開いたわ。
――はっはっ!心配いらんてっ!さっきみたいな感じで、けっこう声のボリュームだけおっきしたらエエねんから!殺サナイデクダサイ!って意志さえ伝わればエエねん!
――んー、まぁガンバリまぁス。
アタシはこんなふうにヘビ男に軽く返したワケだけど、ホントはけっこうビビッてた。コイツの豹変ぶりっていうか、スに戻ったときがあまりにもケロッとしすぎだったからつい。なんかもう日常のイチブになってマスってか、ノリがさっきと全然ちがうワケなの。まあアタシは求められた「殺されたくないキャラ」をてっとり早く演技して、もうなんかココがウザクなってきてたわ。なんかムナシかったし、ちょっとツラかった。現金でそのまますぐにギャラくれるとか、そういうハナシはきいてなかったし、とにかくソッコーおわらしたかったのよネ。
――オマエ、キムチ臭いなぁ?朝鮮人ちゃうか?頭もワルそうやし、なんか部落の糞朝鮮っぽいなぁ!顔付きがキモイわぁ!糞キムチっ!オマエの糞ジジィと糞ババァはちっさい頃帝國軍兵士にチンポとマンコ強制的にドッキングさせられてガキつくったんちゃうか?オマエら文化コンプレックスで日本旗燃やしとるんちゃうゾ?竹島は俺等のモンやろぉがぁ?整形のシスギちゃうんか?糞キムチっ!マンコもケツの穴もキムチ臭くてタマランなぁ!糞キムチっ!殺したるデぇ!ゆっくりゆっくり表皮を剥ぎ取って南京虐殺の頃くらいオモロイ殺し方したるデェ!糞キムチっ!
――殺さないでください!まだ死にたくないんですっ!お願いしますっ!お母さんとお父さんに合わせてっ!お母さん!お母さん!ああ、死にたくないっ!
――あかんあかん!今からもうオマエは死ぬんやで?おいっ!お前らっ!電ノコもってこいっ!こいつの目玉くりぬくさかいっ!はよ持って来んかぁ!
――いやぁ!許してぇ!お願いっ!何でもシマス!許してくださいっ!ああ、イヤっ!死にたくないですぅ!助けてくださいっ!何でもシマス!ああっ!
――ごっつ五月蝿いガキやのぉー。おいっ!ガムテも持ってこい!口塞ぐわっ!あとビニールに入れとる俺等のウンコも持ってきとけ!もうそろそろ食わすわぁ!
アタシ、泣いてたんだ。でも、もうなんだか自分がマジで泣いてるのか、ウソ泣きしてるのか、ワケがわかんなくなってたの。ヘビの男がずっとアタシのおっぱいを鷲掴みしてて、アタシの両手両脚をアザの女が押さえてて、大道具の男がまたワゴンへ走っていったわ。リーダーの男は電気ノコギリをあのキモチ悪い鞄から取り出して、それをヘビの男に手渡したわ。ヘビが電源をオンにしたみたいで、アタシ、もう死ぬほど怖くて、っていうか、これが演技なのか、マジなのか、もう生きて帰れないのか、そういう次元とおりこして、マジで殺されるって、死ぬほどこわかった。ワケわかんない大粒のなみだがあふれ出てきて、中学時代の、公園で子猫にキリを突き刺して遊んでたガキどもの満面の笑顔を思い出したりして、それでアタシがとめにはいったときは、もう遅くて、息が弱くて、アタシ、助けられなかった、あの子猫のお墓をミホといっしょにつくったとき、ミホは大泣きしてたけど、アタシは泣いてなかったわ、あれはどうして泣けなかったんだろう、アタシ、あのとき泣いてたら、こんなトコロでこんなヤバイコトにまきこまれなかったのかな、でも、ぜんぶアタシのせいよ、アタシがRをよびよせて、アタシが自分で足をつっこんじゃった世界、アタシ、ここで死んだらきっとすっごい後悔するわ、だって、まだあの豚ママや豚パパや根暗兄貴に一番いいたかったコトいってないもん、アタシヲ/ウンデ/ソダテテ/クレテ/メイワク/デシタネ!/ドウセ/アタシハ/スグニ/シニマス/カラ!って、ほんと、どこで生き方ミスったのかな、つまんないのね、人生って、もうイイヤ、どうせならアタシがキリであの糞猫の息の根をとめればよかったのネ、それじゃあこんなチュートな蛆虫じゃなくて、もっと筋金入りのニンゲンノクズになれてたと思うもの、ほんと、もう死んでいいや、マジで世界とか愛とか友情とか金とか希望とかどうでもいいや、アタシのことなんかミンナ嫌いでしょ?だったらいさぎよく死にますから、サヨウナラ、糞世界、サヨウナラ、糞人生、もし今キリストが眼の前にいたら、きっとペニス噛み切ってやってるわね、慈愛?ナニソレ、みたいな?くたばれ、糞マリア、糞キリスト、アタシを十字架にかけれるならカケテミヤガレ!
アタシ、それで鳥になろうとしたんだ。胸に大きく息すって、全部この世界のこと忘れようとおもった。それで、なんていうか、あっ!ナニあの白いのっ!みたいな、ちがうな、まあイイヤ、とにかく、だんだん頭がボンヤリしてきて、珈琲に睡眠薬でもはいってたのかな?とかおもいつつ、もうホントに眠くなって……それで、シネヨアタシ……うぃいいんっていう、機械音がみみの外か内かよくわかんないトコロで鳴り響いてて……うぃいいんいいぃいん…………あれ、痛くない?あっ……麻酔も入ってたの…かな………シネヨアタシ………クタバレキリスト………アタシがこんなくだらない世界をおわらせてやるわよ………だって……アタシの名前……マリアっていうんだもの……できるわよネ…………ウィいいいいいぃいいん……ぎぎぎ…ちょっとイタイ……シネ………みんなクタバレ…………………………アタシは………聖母よ………不滅の……………あれ……アタシって……………………………………………………………………………………………………………………………………学校やめ………………………………………………………たんだっ………………………………………………………………………………………………………………………………け……?
アタシが眼を醒ましたのは、ワゴンの中だった。ずっと寝てたみたい。すぐに飛び起きて、手足がついてるか確認したわよ。でも、なんともなかった。撮影は全部おわっちゃったみたいで、車にあいた扉にアイツらが荷物投げ入れてるの。アタシ、それをぼーっとみてたわ。辺りは夕方のオレンジ色に染まっちゃってて、ヒグラシとか鳴いてやがんの。リーダーの男が、アタシの肩に手を乗せて、「おつかれさん」っていったわ。アタシ、「あっ」って声を出したっきり、なにも返せなかった。っていうか、なんか体がダルくて、一日中歩いたってカンジ。やがてミンナがワゴンに乗って、アタシは後部座席の、あの荷物でごったがえしてるところで小さくなってた。ヘビの男も「よぉガンバッタなぁ!」とかいってた。アタシ、そのままじっと、外の景色を眺めてたわ。なんか流れるような風景だったな。むかし、誰だっけな、森ナンチャラとかいう作家のショーセツ学校でやったけど、あれに車か馬車で流れる風景のことかいてたな。意味ないようなトコロだったけど、なんかインショーに残ってた。あたし、その後、駅前の大通りでギャラもらって下ろされたわ。ニセサツかもしんないけど、でもまあすぐにバラスわよ。そいつらとは、もうそれでわかれちゃって、後は帰るだけだった。アタシ、悪夢にうなされてて、いきなり誰かに励まされたような気がしてたわ。ちっちゃくなっていくワゴンを、遠目で眺めてて、「シネ」ってつぶやいたの。そのうち捕まるわよ、ブタ箱おくり。アタシの眼にモザイクとかかけんのかな?どんなふうに殺されてたんだろ?電ノコはホンモノだったけど、どうやってマジで殺したようにみせかけたのカナ?寝てたし、もうイイ。雑踏の中で、なんかひとりポツンって立ってたわ。時計台のほうから、ボーンっていうナサケナイ音がひびいてた。誰かが空にダイブしたみたいに、西の空だけ血みたいにマッカなの。でも、ホントあたしってクズみたいな女ね。アイツラにとっても、いいカモだったみたい。っていうか、これからどうやって生きていこっかなぁ?学校いきなおす?ウザイ。じゃあAVで稼ぐとか?勝手にしとけば?アタシにしかできないコトってなんだろぉなぁ。あの子猫のお墓、ちゃんとつくりなおそっかなぁ。まだあの木の下に、「ミーコ」って札立ってるのカナ。ミホじゃなくて、アタシがアンタにあげた名前。ちょっとハヤスギでしょ、死ぬの。アタシがかわりに死んであげればよかったわね、ミーコ。もう、どうでもいいや。とにかく、明日制服着て、鞄ひっさげて、聖母マリア像をハンマーでブッ壊してくるわ。あの憐れみっぽいまなざしがタマラナクフユカイ。街はハキダメ。夕陽はキレイ。アタシは家のある方向へゆっくり歩き始めた。自分の足で。胸で十字を切りながら。
(FIN)