何の虚飾も交えずに、自分のことを書きたい。僕は今、幸せだ。二年前よりも、そして去年よりも、僕は精神的に成長したと思う。それは僕が僕なりに苦労して、今の好きな店を見つけたことと深く関わっている。僕は読者に対して嘘をつきたくないので、正直に語るが、今の自分にある程度自信を持てている。その理由は、僕が二十一歳の時に自ら洗礼を受けて、カトリックになったということに由来している。僕の洗礼名は洗礼者聖ヨハネで、僕は彼の聖人伝を自分なりに書きさえした。ヨハネに対する僕の非常に強い「同化」意識は、僕に今や「憑依」されることすら望ませているくらいだった。
憑依と書いたが、もう少し巧く説明しておきたい。僕は「私はヨハネである」と、路上を歩いている見知らぬ通行人に断言できるほどのある種の「確信」を、こういってしまえば「狂気に裏付けられた自己規定」が欲しいのだ。僕のヨハネへの関心は自己分析してみるに、明らかにサロメ/ヘロディアに対する僕の官能的な思い入れに基づいている。ヨハネは斬首されるのだが、僕もいずれサロメのような、あるいはヘロディアのような女性の罠にかかって「象徴的な殉教」を遂げることを待っているのである。
僕は十代、いや、おそらく最近まで、「自己否定」ばかりをこのような内省的な小説に綴ってきた。だが、自分を否定することが社会的に見て、「未成年」であると最近は感じている。ドストエフスキーの『地下室の手記』には、露骨な自己否定が描かれているが、僕はそれに対して、「貴方がそのように書くことで大いなる自己肯定に繋げられたのなら、それは正しかった」と今はいいたい。書くのであれば、書いた後には「成長」しているような小説を書きたいものだ。
僕が働いている店は、「書店」と看板を掲げているが、実際はポルノが売り上げの大半を占めている。そこでもうすぐ一年になる。一年といえばまだ短い。だから僕はポルノについて、まだ語ることはできない。そもそも、僕はアダルト業界の末端にしか位置していない。僕がしているのは、ポルノを仕入れて販売することだ。店に来るとレジの傍にダンボールが積まれており、それをカッターで切り開き、中から新作のポルノを取り出して、画面上で仕入れ処理を済ませ、セキュリティケースに一枚ずつ入れていき、新作カードをつけて、メーカー別の商品棚に並べていく。その間、お客さんが来たらそのつど会計処理もする……こんな感じの仕事風景だ。
僕には事実を小説として翻訳する過程で、多様なレトリックを使ってしまう癖がある。だから、この物語では極力、ありのままの僕を曝そうと考える。飾りたくないのだ。むしろ、今の僕の無意識にまでこびりついている「自尊心」の衣服のようなものを、一度脱いで、裸になりたいのである。
ポルノについて何かを語りたいという意志はある。小説として何か書けるのではないか、などという凡人の企みのようなものが僕にもきっとあるはずだ。だが、ポルノは僕の生活にもう馴染みつつある。今でも、女が「いぐぅ! ……またいっぢゃうぅ! 」などと喘ぎに喘ぎながら大量に潮吹きしている光景などをモニターで観ると、ムラムラしてしまうことはある。そういう時、僕は舌打ちして欲望を抑え込む。僕がいいたいのは以下だ。つまり、「音声」は僕にとって映像以上の力を持っている。だが、「映像」はどれだけ女優がセクシーな姿をしていても、それほど僕に勃起を誘発させない。イコノグラフィー、ポルノグラフィーという言葉を使うのであれば、静かな画像的なポルノは、実は「祈っている」ような気配すら感じている。ポルノを擬人化して、一人の少年を生成させると、誰もいない夕刻の教会のステンドグラスに、膝を折って言葉もなくただ祈っている少年の姿がぼんやりと覗ける。
ポルノには多種多様なメーカーやジャンルが存在するが、総称してこのポルノを擬人化する時、ポルノは常に無垢な、しかも女性の体を知らない、真っ白な包皮に包まれたペニスを持つ少年になる。何故なのか? それは、穢れた世界のただ中に、聖なるものに対する「近さ」を感じるからである。だから、ポルノというのは実際は非常におとなしく、温厚で、穏やかではある。だが、この少年は、快楽的で煽情的なるものから「遠い」がゆえに、実質的には極めて「近い」のである。ポルノという少年の存在は、マルコ、マタイ、ルカ、ヨハネ、シモン、などといった聖書特有の固有名と同じように僕の中で今、新しく意味を与えられつつあるわけだ。ポルノは真面目で、病気がちの母親を持つという点でジョバンニと似ているが、誰もいない夕暮れの平原で、そっと自分のペニスが意味もなく勃起しているのを見つめている。そして彼はいう。「主よ、なぜ僕のあそこはこんなに大きくなっているのですか? どうか僕に御教えください……」。
この一年間は、彼のそうした祈りを見てきた日々だったといえる。
ある日のことだった。ミステリアスな物語として僕が最初に想像するのは「小雨の振る夕刻の喫茶店」なのだが、僕はその日もやはり同じポルノショップで働いていたのだった。店にはスロットコーナーまであり、そこに不良が溜まって時に迷惑することがある。だが、その日は性欲を高めさせるような陰湿な曇天ではなく、むしろカーテンを閉じている人でさえ外の気配に気付くような快晴で、奇妙にも店内には誰一人存在しなかった。そのような日、僕はいつもレジの傍にある監視カメラのモニターを覗き、入って来る客の気配が無いか、或いは、外の車道の光景を「画面越しに」覗く。
読者にはこの時の神秘的な僕の感覚が伝わるだろうか。僕は見慣れた店の外の車道が、ひとたび「画面越しに」なるや否や、まるで現代美術の一つの作品のような濃密な気配を帯び始めることに気付くのだ。いつもと同じ部屋でも、おそらくセピア色にしか写らない上質なカメラで撮影すると、非常に素晴らしい雰囲気を宿すようなことが、ありふれたポルノショップのこの「監視カメラ」にすら生起するのである。
しばらくそうして僕は、監視カメラを通した映像的な世界を見つめていた。すると、一人の女子高生が入店した。幾人か顔を覚えている客ならいるが、もともと店に女性客が入ること自体珍しく、僕はそれだけでも急速に「業務」に引き戻されるのだった。
僕はしばらく中古 DVDに新しいフィルムを貼っていくという作業をしていた。このような単純な作業は、時に僕を落ち着かせることがある。すると、いつの間にか漫画や雑誌が並んでいるコーナーから彼女の気配が消えていた。モニターを見ると、ポルノのコーナーに彼女は移動していた。彼女はしかし、一般的な男性客のようにパッケージの裏を確認したりするような行為をせずに、監視カメラを眺めている僕に気付いているのか、なんとモニターを凝視していたのである。僕は震撼された。そして、十秒も経たないうちに、冷静さを取り戻した。
彼女はスクイックというメーカーの、「女性がただひたすらゴキブリを代表とする気味悪い昆虫を素足で踏み潰す」というだけの極めてマニアックなDVDを持ってレジの前に姿を現した。その作品は定価10500円で、通常の女優系のポルノが2980円であるのに較べて高く、明らかに女子高生がその小遣いで一ヶ月に購入する物品としては常軌を逸していた。僕は彼女が「ウケ狙い」でこれをレジに持ってきたと判断し、スムーズに、
「10500円です」
とバーコードを通してからいった。彼女はブランド物だと一目で判るような、上質の光沢を持った白い財布(そこには銀のアクセサリーが交錯しており、ブランドネームを表すであろう“D”と“R”のロゴマークのみかろうじて見えた)を普通の学生鞄から取り出し、ほとんど新札といっていい万冊を二枚、サッと千円札を渡すような感覚で受け皿に入れた。僕は少々虫唾が走ったが、このようなマニアックな商品を買った愚かしさに対して、独特の愛情を寄せつつあるのも事実で、それはほとんど憐れみといっても良かった。
「あのぉ……ちょっと御聞きしても宜しいでしょうか? 」
「はい」
「ここに『8mm』っていう映画に出てくるような本物のスナッフとかは置いてるんでしょうか? 」
僕は耳を疑ったが、これも「業務」として素早く切り替え、それに徹した。
「いやぁ、ちょっとそういうのは置いてないですね。っていうか、スナッフっていうのは通常のポルノの市場に出回らないはずなんですね」
僕はこのような法的な前提を彼女が全く認識していないような気が話している間に起きて、不気味だと感じた。
「あっ、そうなんですか? じゃあ撮影中に子宮が破裂した、とかはありませんか? ちょっと頼まれてそういうものを探してるんで……」
彼女はその時、非常に申し訳なさそうな素振りをした。
「ああ、えーっと、そういうのなら確か最近入ってきましたね。桃太郎っていうメーカーから出てるやつで……」
僕はそういいながらレジの鍵をポケットに入れ、彼女のいるポルノのコーナーに入った。僕は桃太郎の棚に行って、ある妊婦が撮影中に死亡したらしい作品を一枚持ってきた。そして、後方まで来ていた彼女に渡した。
「これは撮影中に亡くなった方のものなんですね」
「へぇ」
「確か一枚しか入ってきてませんでしたね」
「あっ、ありがとうございます」
彼女は半ば緊張したような面持ちでそれを受け取って会釈した。僕はレジへ戻った。結局、彼女はその作品も万冊を千円札のように扱う感じでサラッと購入した。僕は普通の客よりも100円の金券を多めに彼女に入れて、「ありがとうございました」といった。彼女は会釈して包んだ袋を学生鞄に入れると、普通の女子高生がファッション誌を買っていくような感じで、店を平然と出て行った。
僕は家に帰り、夜遅い食事を済ましてシャワーを浴びた。それから自室に戻り、眠る前に裸体になった。僕は裸体のまま温かい布団に包まり、干したばかりの新鮮なシーツの上に横になった。僕は眠るためには「更なる疲労感」が必要だと感じ、マスターベーションを始めた。僕の萎縮した哀しい芋虫のような黒褐色のペニスは、すっかり包皮を被って死んでいるようだった。僕は魂の奥深くでペニスに対して、「君は元気なはずではないか? 」と問いかけた。すると、僕のペニスは僕自身の強靭な握力の甲斐もあって瞬く間に屹立し、布団の上で小高い山を形成するに至った。
僕は未知の惑星に不時着する宇宙船をイメージしながらペニスに快適な刺激を与え続けていた。その宇宙船には三十人の女性飛行士と二人の男性飛行士がおり、彼らが原初のエデンを再現前化させるのだ。二つのペニスに三十のヴァギナが対応し、次の惑星で彼らは文字通り「始祖」となる。始祖たちの秘密めいた船内の快楽が、僕の意識に強烈な欲望を刺激させるものを孕んでいる。二人の男性飛行士のペニスは新しく世界を始めるために何度も使用され続ける必要があり、女性飛行士たちも子作りを愉しんでいるようだ……。僕は「あっ、イく」とか、「それ以上はもう死ぬ、死ぬ! 」などとマゾヒスティックな自慰に耽りながら、遂に自分の腹の上で射精した。
しばらく精液を出し終えた後の、あの名状し難い「神学的白痴感」に浸っていると、急速に夕刻に顔を出したあの女子高生客のことが想起されたのだった。彼女が購入したスクイックというメーカーには、女性の鼻腔を拡張するという極めてマニアックなジャンルの作品群が存在する。僕は奇妙にも、射精し終えた直後、あれら鼻腔を針金や釣り針で捻じ広げられている素人女優たちの顔の一人に、女子高生が混じっていたような錯覚に陥った。その時である、僕が精液を一定量喪失した後の気だるい感覚で、「祈り」の風景を手繰り寄せたのは。実はあれら痛々しいプレイに身を捧げている女性たちは、泣いているのではないのではないか。なるほど、確かに女性たちはおそらくは金のために、己の大切な鼻の穴さえをも陵辱されて良いとすら考えている。だが、鼻腔に釣り針が引っかかって泣いている女性の凄まじい表情は、人間が顔で表現する苦痛の表情の一定水準を大幅に超越しているがゆえに、逆説的に「神聖」なのである。
黎明期のキリスト者たちが身を持って味わった身体的な受難には、「全身の生皮を全て削ぎ落とす」という拷問も存在した。僕は実際にその光景を描いた絵画を、ウンベルト・エーコの『醜の歴史』の原書版で見たことがあるが、今になって僕はようやく、「ポルノグラフィーとイコノグラフィーの謎めく接合点」を感じ始めるのである。二つは実は同じものであるかもしれない。苦しみ、泣き喚きながら犯され続ける鼻腔の激痛に耐え忍んでいる全ての素人女優たちは、どこかの次元で「殉教」的なのである。僕はこの不可思議な関係性について、未だ巧く説明することができないのが悔しい。
スナッフというのは、僕は思うのだが、人間が人間を殺す映像を撮影したポルノである。それは戦争報道のワンシーンで、女性の血塗れの死体がお茶の間を震撼させるというような次元ではない。ポルノというのは、本質において「娯楽」である。すなわち、スナッフとして創造されるポルノが仮に存在を赦されるとすれば、それはその本質において「娯楽」である。
スナッフが「娯楽」である以上、スナッフの映像の中で辱められ、嬲られ、凄まじい激痛の果てに絶命する人間は、観客側の視点に立つと「娯楽的に死んでいる」といわなければならない。そして、最も重要なのはスナッフと同じある謎めく次元において、生皮を剥がれて死んでいく聖人たちの悲痛な叫びを見物して「イきそう」になっている死刑執行人たちが確かに存在したということなのである。
僕はティッシュペーパーで自分の亀頭に付着している残りの精液を丁寧に拭き取りながら、こうして一つの対応関係を考えることができたことに満足感を覚えていた。ポルノというのは、キリスト教神学と深い接点がある、と僕は己の嗅覚でそう感じてきた。そしてそれは事実であった。ポルノは、キリスト教神学においては実在することになっている「悪魔」と深い繋がりがある、と僕はここで断言する。ポルノは徹底的に「悪魔」的である。では、どのようなポルノが悪魔的なのだろうか?
美形の有名女優がレイプされるというだけの作品は、未だ悪魔的ではない。悪魔的なポルノは「殉教」をテーマにするはずだからである。この時点で、日本国内のAV市場に出回る一般的な全てのメーカーが「悪魔的」ではないことになる。
今日店に来て平然と「スナッフはありませんか? 」と尋ねてきたあの女子高生は、知らず知らずのうちに「娯楽」を通り過ぎてしまい、いつの間にか「悪魔的」なるものに足を踏み入れていたのではないか。僕は彼女と店内で二人だけで過ごしたあの短い期間に、現代日本においてさえ存在することがあり得るキリスト教の悪魔の「静かな具象化」の如きものを見た想いがしたのであった。その心象を一言で表現することを赦されるのであれば、読者よ、それは「世界の終わり」になる……。
その日以来、僕の中でポルノを「観る/販売する」だけの受け手側から、よりクリエイティヴな「創る/撮影する」という側へ移行したいという内的な欲望が高まってきたのは事実である。だが、二十三歳、恋人がいない先天的失恋者であるこの僕は、ポルノを撮影したくても、自分の射精シーンを永遠と撮り続けることしかできないであろう。
僕は死ぬまで、いわば「あの山をいつか登りたい」といって麓の山荘から眺めつつ、結局山登りはしないで地元へ帰る机上の空想家ではないのか。そのようなことがあってはならない、と思いつつも、僕には身近に「素人女優」がいないのだ。「素人女優」さえ見つけられれば、僕自身がギャラを払い、彼女と僕二人だけのポルノを撮影することが可能である。
だが、「ネット」の海原には案外、出演を欲している女性たちは存在するのである。僕は出会い系サイトを経由することには躊躇いがあった。そもそも、その出会いは「セフレ」を前提にしたものであり、僕のように一定のコンセプトに基づいたポルノを撮影したいという意志に合致しない。
数ヵ月後、意外な女性からコメントが届いた。彼女は以前、あるサイトで僕と共同創作をしていたことのある女性で、ハンドルネームは「ミッキー」だった。彼女は僕といつかリアルで話してみたいと思っていたという。僕は純粋に嬉しかったが、メールで僕自身の秘密の目的についてあらかじめ報告しておくべきだと考え、下心をも含む野心を全て話した。
<ミッキーさんへ
僕も貴女に会いたいです。でも、一つだけ真剣に取り組みたいことがあります。それは、非常に申し上げにくいのですが、男と女が一人ずついないとできないことです。何か? 率直に申し上げます。それは、ポルノを撮影するということです。撮影するのは僕です。ですから、そこに今回、貴女が出演して欲しいのです。
鈴村智一郎>
このメールを送信した翌日、本名は「美紀」というミッキーから返信があった。
<鈴村さんへ
読んでてビックリしました。誤解を招いたらアレなので先に返事しておくと、わたしはOKです。っていうか、鈴村さんってブログにも書いていらっしゃいますけど、ポルノショップの店員さんなんですよね? しかも、二十一歳の時にカトリックで洗礼まで受けたのにっていうw ((= ̄□ ̄=;))
正直、どんな作品になっちゃうのかなって、今でも足がガクガクしてます。あっ、このガクガクは恐怖感じゃあないですよ?。ちょと楽しみって意味のガクガクでした☆^∇゜)♪
ミッキー>
<ミッキーさんへ
返信、どうもありがとうございます。
いや、僕もめっちゃ嬉しかったです。僕もって、ミッキーさんはまだ何も知らないから一人で喜んでてもダメですよね(笑)。とりあえず、三日間の予定で考えてます。お互いに職場を休める日を作って、京都かどこかの旅館を拠点に三泊でもしたいところです。撮影場所は、もしかすると旅館になるかもしれません。ミッキーさんがラヴホが良いとおっしゃるなら、三日間で三つのラブホを巡礼(笑)するというのもアリですよ。
で、肝心の内容面ですが、「世界の創造」をテーマにしたいと思っています。どういう映像にするかというと、ちょっと具体的な話になってくるんですが、まず僕がミッキーさんと普通に前戯をします。で、ミッキーさんのパンティを脱がして、最初の一時間はもうずっとひたすら「マンコ舐め」に終始しようかなって思ってますw この時、僕の舐めてる舌とか、クンニしてる指とかをアップで撮影したいんですね。だから、ミッキーさんのマンコはモロ見えですよ(爆)。
ミッキーさんのマンコが愛液でトロトロのグチョグチョになってきた辺りで、僕がナグ・ハマディ文書の『シェームの釈義』っていうグノーシス文献を日本語で朗読します。朗読してる僕はもちろん、裸w。で、朗読中の僕をミッキーさんは熱心にフェラして欲しいんですね。ここはもう死ぬほどエッチな感じでフェラテク御願いしますよ(笑)。
二人の性器が準備OKになった辺りで、(僕はまだたぶん朗読してます)ミッキーさんが騎乗位になります。で、あとはやっぱり一時間くらいそのままセックスです。ミッキーさんはひたすら腰を動かして下さい。僕は下でひたすら耐えます(ここで射精したくないので)。
だいたいどんな感じか判ってきましたか? あんまり想像してた以上にエロくないですよね? 普通のポルノにナグ・ハマディ文書朗読が入ったくらいなんでw でも、最後の射精シーンだけは重要な意味を持たせたいんです。フィナーレをどうするか、いわば二人が一番感じまくってイく時のシーンをどうするか、それを貴女もどうか考えておいてください。鈴村もまだ考え中なんですw
ちょっと長くなってしまいましたが、最近寒いので、御体には気をつけてw
僕のハニーはいつも貴女だけ>
<鈴村さんへ
変態! って思わず怒鳴ってしまいましたw
すいません、エッチ過ぎてケータイ読んでるだけでイキそうでした…(マジで鈴村さんエロ過ぎ(●´ω`●)ゞ)。私のマンコ一時間も舐めるつもりなんですか(笑)? えっと、ちょとヘンテコな質問になりますが、剃っておいた方が良いんでしょうか…? ああ、なんかもう今から鈴村さんに抱かれるかと思うと胸がとろけていきそうです……(*´ェ`*)
フェラなら、一年前くらいに別れた年下の彼氏に何回かやってあげたので、何気にけっこう得意ですよ?w その時の彼氏は、早漏だったんで三分で昇天でしたね! カップラーメンできあがると同時にイく、みたいなw だからフェラシーンはミッキーに任せてください。ちなみに、ミッキーは包茎ペニスの皮のところを、やさしく唇で脱がしていくのがたまらなぁ?く大好きだったりします……▼*゚v゚*▼
場所、日時とか全部鈴村さんに任せます。私も一応、こう見えて普段は普通に派遣社員なんで、お金はそこそこ出せますよ。旅費はでも割り勘でおねがいしますよ! ってな感じで、すいません、今愛猫のミシェルが病気になってて、なんかそっちのことでも頭がいっぱいだったりしてます……(。・・。)
私だけの大好きな鈴村さんへ>
僕と美紀はこうして、半月後には早速京都の「ほのか」という和風で上質な佇まいのラヴホテルで落ち合うことになった。【夜遊びじゃらんcom】という有名なサイトでは、このラヴホは中年男女の蜜月の場として利用されることが多いそうで、嵐山の高級旅館に外装を倣っているらしい。黄昏に辺りが沈む頃合、障子の奥から紫陽花色のネオンが瞬いている。僕よりも二倍は年上の、明らかに高級ブランドと判る上等な毛皮のコートを纏った壮年女性が、僕と同年くらいの若い男と肩を寄り添い合って玄関へ向かった。発情した雰囲気の中に、一定の美意識を宿したかのようなホテルの庭園を、僕はゆっくり眺めながら歩いていた。
背後から少女の声がした。振り返ると、今というこの現在が太古の昔に感ぜられるほどの鮮烈な果肉色を帯びた夕陽に照らされて、見覚えのある肖像画がそこに描かれていた。あのスナッフを欲していた女子高生である。
「えっ? 君が美紀さん? ミッキーさんですか? 」
「鈴村……さんですよね? 」
僕は正直、唖然としていた。この少女とは今回が初対面ではない。彼女は一度、僕の働くポルノショップに客として来店していたのである。僕らはお互いが求め合っていた対象であると認識すると、ほとんど沈黙したまま予約済みの和室へ向かった。和室とはいえ、枕元の堤燈に黒い網タイツが巻き付けてあるような悪趣味さを放つ淫靡な空間であることには変わらない。
「もしかして……前に一回俺と話してる? 」
僕はGUCCIの鞄を襖の片隅に置きながらそうさり気なく尋ねた。
「ふふ、一度だけ話してますよ。実は、私ね、鈴村さんが前に書いてた告白小説で、大阪のM市に住んでるってことを覚えていたんです。M市にあるポルノショップをグーグルマップで検索すると、最初にヒットしたのがあの店でした。で、鈴村さん自身、ニコラス・ケイジ主演のあの映画が好きみたいなことを前に投稿サイトのチャットでいっていたはずだから(あっ、私はその時もちろんROMだったんですけど)、印象に残るような話題として『8mm』をふっかけたってわけです。どうでした? なんか私の掌の中で鈴村さんが弄ばれてるみたいでしょ? 」
美紀はこの年にしては稀有なほど能弁が過ぎていた。だが、それよりも僕はまだ若干十七、八歳と思しきこの少女の計画性と僕自身に対する強大な執着に震撼したのだ。僕はミッキーという女性は自分より五、六歳は上だと思っていたし、彼女自身が「派遣社員」だといっていたからである。だが、実質的にリアルでミッキーという女性は、あの日スナッフを買いに来た女子高生であった。僕が年上好きだということを想定した上で作った冗談としては、なかなか笑えないほど手の組んだものである。
「相当君は知的だな。今日俺とマジで会いに来たってことは、セックスとかポルノ撮影だけが目当てじゃないってことか? 」
「鈴村さん……鈴村さんには内緒にしていましたけれど、私もけっこうポルノグラフィーに関心があるんです。でも、私が惹かれるのは、私みたいな女子高生があんあんあんあん喘ぎながらイキまくる普通のポルノじゃなくって、一個の人間存在の命を“踏み躙る”ような作品のことなんです。そういう点で、私は鈴村さんみたいにあの映画がスキってくらいの次元じゃないかもしれませんね。むしろ、あの世界の中の住人の一人だと思ってもらった方が本来の私に触れられるかと思います……」
僕はその時、この美紀という少女の背景に極めて危険な「国家理念」の如きイデオロギーが作動している気配を嗅ぎ取った。彼女は僕が想像の段階に留めていた最高度に悪魔的なポルノグラフィーとしての「スナッフ」を、実質的には撮影「したい」と欲しているのである。僕は彼女を怖れた。それは、僕自身が洗礼名を有する一人のカトリック信徒であり、眼前に立っているのが聖書に登場するいかなる危険な人物の類型にも属さないほどの「無垢さ」を孕んだ存在だからというのではない。そうではなくて、僕は一人の人間が、「いま、現に、壊れている」というその一個のサンプルを手にしたかのような、未だかつてない凄まじい戦慄に襲われていたのである。
やがて胸元のはだけた着物を羽織った若い女性が、僕らのために簡単な食事を運んできた。驚愕すべきことに、それは若々しく屹立したペニスと女性の豊満な胸の形に加工された刺身のハマチだった。ハマチの隣には鮮血を漲らせたようなマグロが乗っていたが、その形状は、ぱっくりと陰唇を開いた女性器そのものだった。悪戯が過ぎたような脱力感すら漂うそのラヴホ特有の和風料理に、美紀は瞳を輝かせて無垢に微笑んでいた。
ホテルの女性が去り、僕らは異様な料理を眼前にして二人だけになった。金を既に支払っている分、僕は何食わぬ平然さを装って一気に食べてしまうことを決意した。ふと、コートを脱ぎ忘れていたことに気付き、立ち上がってシャワールームの傍にある洋服箪笥に直しに向かった。ハンガーにコートをかけて、和室(というよりも、妖しげな寝床がすぐ近くで待ち構えているので寝室ともいえるだろうが)に戻ると、いきなり美紀が男心をくすぐるような眼差しを浮かべて抱きついてきた。僕は一瞬凍結して、動く、喋る、という行為が不可能になった。
「あぁ……DIOR HOMMEだぁ……。さっきのコートもそうなんでしょ? すっごい似合ってますね、鈴村さん。私もDIOR、鈴村さんもDIOR。私たち、本当にコインの表と裏みたいに、違うところといえば、アソコくらいですね! 」
その時、僕はこれまでそれほど意識してはいなかった美紀の服装が、実は僕自身と記号的にシンメトリカルなコーディネイトだったということに気付いたのだった。彼女は確かに09年秋冬シーズンのCHRISTIAN DIORで全身を統一していたのだ。それは、僕がブログで「DIORが似合うような年上の女性といつか街を歩きたい」などと気楽に書いていたことを、本気にしてしまった結末のような印象を僕に与えたのだ。
僕は彼女を傷つけないように優しく腕を離すと、急速にあらゆるポルノグラフィックなものを撮影したいという意志を喪失したのだった。正直、ここまでいきなりベタベタしてくる人間自体が、僕にとっては奇怪なのだった。無論、彼女の奇怪さにはリアルのこの「僕」ではなく、「鈴村智一郎」というネット上の青年に対する信仰に裏付けられた独特な魅力も宿っているのだが、今はまだその不気味さの方が圧倒的に高く感じ取られていたのである。
「鈴村さん、いきなりこんなこと女の子の方からいうのもアレなんですけれど、もう早くエッチしませんか? ここ、混浴の大きな露天風呂もあるみたいなんです。一緒に入りに行きませんか? 私、もうガマンできないかもしれません……。オフロにデジタルカメラ持っていって、私のアソコとか撮っちゃってください……」
「バルトークの……」
僕は吐き気のようなものを感じてそう口を開いた。
「えっ? 」
美紀がキョトンとした眼差しで僕を臆病な栗鼠のように眺めている。
「弦チェレの第三楽章が今、頭の中で流れてるよ……。美紀、君のテーマだ。僕は何故だかわからないが、たぶん何もできないと思う。撮影も、ヤルのも……」
「おいおい、なんじゃそりゃ? 」
美紀がおどけた面持ちで微笑した。
「美紀、本当にスナッフを撮りたいのか? 冗談だろ? そもそもどうやって俺ら二人だけで撮るっていうんだ? あれは映画の中の話で、実在しないんだ。実在する意義があるか? ネットのグロ動画で何で満足できない? なんでわざわざスナッフなんだ? 何がそうさせるってんだよ……。ああ、俺は今、死ぬほど憂鬱だ……。頼むから、さっきみたいなことを平然といわないでくれ。俺は臆病なんだ……」
僕はそういって、ふと窓の外に広がっている景色に目を疑った。先刻までは京都の高級旅館に付き物のような和風庭園が広がっているだけだと思っていたのだが、この部屋の窓から広がる光景は、一面が広大な墓地であった。方角によってこれほどのアンバランスが生じていること、そして来客用の玄関周辺にのみ華美な外装を凝らすこと、僕はそれ自体が既に幼く、猥らだと思った。室内では秒針が時を刻む音しかしていない。沈黙が僕らの間に横たわっていたが、美紀は僕を絶えず凝視していた。
「鈴村さん、私ね。貴方はタダモノじゃないとずっと思ってきたの。断言するけれど、鈴村さんは絶対に作家にはなれないわ。ふふふ、嬉しい? 鈴村さんはね、本当はカトリック教会が大嫌いなはずでしょ? そういうことを、ブログに書いてなかったかしら? 貴方は、神父ドモの首塚の上で彼女とセックスしたいって思ってる。五千、六千と神父ドモの生首を運動場一面に敷き詰めて、それを校舎の屋上から彼女と眺めたいと思ってる。それが、鈴村さんが前にいってた“終末の風景”でしょ? 私ね、貴方の隣にずっといたいの。私も鈴村さんみたいになりたい。鈴村さんは男だから、私は女として、もっと猥らでもっと聖化したい」
「君は俺を勘違いしてるな。俺は猥らだけれど、聖化した部分などない」
僕がそういうと、美紀は疲弊したように灰色の溜息を吐いた直後、
「貴方の生き方を見ていると、なんかイライラするんです……」と哀しげに囁いたのだった。
僕は結局、その夜の深夜、美紀と二人で混浴風呂へ向かった。デジタルカメラを携帯する必要など無かった。観客など、所詮僕一人に過ぎなかったのだから。湯船は既に数知れない精子どもが水泳しているプールのように真っ白に染まっていた。岩場に取り囲まれつつ、丸太を並べた上等な屋根がそれらを覆っている。僕はその時、何故人間の精液があれほど「白い」のかを急速に悟った。神御自身が精液を「愉しんでいる」に違いないのだ。
美紀はありえないほどの貧乳だった。僕がその時ほど、女性の貧乳が疎ましく感じた日はない。美紀の胸は「丘」ですらなく、「板」だった。否、むしろ美紀は女性というよりも少年、というか「中性」的な身体を持っているようだった。僕は心の中で、「爆乳以外の女は皆殺しだ」と囁いていた。
「何でこんなところで君と二人で湯船に浸かってるんだろ……」
僕は萎縮したままのペニスを、浸した白いタオルで姑息にも隠すようにしながらそう何気なくいった。
「鈴村さんが今回の日程で、私とポルノを撮らないつもりなら、私も来た意味がありませんね。明日、帰らせてもらいますけど……」
「勝手に帰れよ。誰もお前みたいな糞ガキとフロに入るためにわざわざ大阪から出向いてやったわけじゃないんだ」
「じゃあ何で会ったんですか? 結局、下心があったんですよね? 」
僕は、僕自身にいかなる欲望も掻き立てる力を持たない彼女の貧しい肉体に対する不快感が限界を越えていくのを感じていた。
「下心も失せたわ」
「何ですか、その言い方。あんまりじゃないですか? 鈴村さんってそんな女の子に粗暴な態度取る人だったんですね、正直、ガッカリです」
「俺はお前の腐った考え方が気に食わないんだよ。スナッフとかな」
「えっ? でも自分も相当イカれてませんか? 世界の創造をテーマにしたポルノ撮影のはずでしょ? その時点で、正直一般的に見てネジがフッ飛んでると思うんですけど? 」
「そうさ、俺もお前もイカれてた。っていうかな、ノボせてたんだよ。だから完全にこうやってノボせきれば、明日の朝には全部忘れてるさ。正常じゃなかった。俺も反省するから、美紀も反省しろよ、とりあえず。だってお前もノリ気だったろ? 」
「どこを反省するんですか? 鈴村さんにも反省なんかしてもらう必要ないですよ。私は鈴村さんとエッチがしたいし、鈴村さんが情熱的になって私を撮影してる姿を私自身が見たいんです。子猫の両手両足を切断するだけの映像でも、死んだゴキブリを皿に乗せて口の中に一匹ずつ含ませていくだけの作品でも何でも良いんです。とにかく、鈴村さんが“俺はカトリックでも、ポルノショップの店員でも無い。俺は俺なのだ! ”っていう、そういう地点に戻ってるところを見たいんです。そこが大好きだったんで……」
僕は溜息を吐いた。美紀のその言葉には彼女特有の魂の励ましが込められているかのようだった。美紀が急速に愛しくなり、触れたくなった。そして、美紀自身、触れられることを待っているのだ。待機するオンナと、準備はずっと前からできているオトコ。後はヤルだけだ。だが、それが僕らしさといえるのだろうか? 洗礼者聖ヨハネならば、そもそも裸体の少女と二人だけで深夜にシャワーを浴びたろうか?
ふと隣を見ると、美紀が湯船の上に下半身を隆起させてマンコを浮かべていた。ほら吸えよしゃぶれよ舐め廻せよこのチンカス野朗がテメェみたいなヤル気のない芸術家気取りの腐れ童貞野朗はこのア・タ・シィのイカ臭いマンカスでも喰らってろや、そう俗物化したヘロデ・アンティパスの一族のような台詞を、彼女の生殖器それ自体が薄笑いを浮かべながら絶叫していた。彼女自身のロリ系が好みそうなつるつるした感じのマンコに僕は関心が無かった。ただ、彼女の陰毛の生え際はセクシーだった。
「鈴村さん、ほら、舐めてよ……」
「お前がもっとオトコ遊びを覚えて、そのつるつるマンコがビラビラのガバガバマンコになったら舐めてやってもいい」
美紀はあまりにも平然と僕にマンコを露出していたので、そこにはあらゆるエロティシズムに宿るべき恥じらいのようなものが消え失せていた。だが、包み隠さす僕の心を述べれば、この時、僕はやはり行為を無限に「先延ばし」させようと戸惑っていたのである。
「私ね……今ね、実は凄い哀しいんだ。私の今の気持ち、鈴村さんみたいな人間には絶対に判らないと思うけどね。こんな風にしか、私は私という存在を異性にアピールできない……。鈴村さん、貴方は二十三歳なのにまだ童貞なんでしょ? なんで捨てないの? 今夜捨てれるのよ? それができないのは貴方がカトリックだからってのは建前で、本当は自分に自信がないからなんでしょ? つまり、自分が男性として女性に対して魅力が無い分だけ、貴方はセックスをおおっぴらに仕事と結合させた……そうすることで、貴方はようやく観念的にだけれど童貞を卒業した。ねぇ、ちがう? 」
僕は美紀の身体を自分の身体に抱き寄せた。そして、湯に浸かっていない腰から生殖器にかけて、それが今僕の眼下にあることを感じつつ、美紀の瞳を直視した。
「俺は人間ではないんだ」
僕がそう大いなる真摯さを宿して断言すると、美紀は「え、、、」と、濁点を三つか四つも必要なほどの躊躇いを覗かせて小声で微笑んだ。
「鈴村さんって、人間じゃなかったんですか? じゃあ一体何なんですか? 」
僕には答えが無かった。自分が得体の知れない魂の痛みに震えるのは、僕がやはり「人間」だからに過ぎないというのは事実だった。その上で、僕にはそれを抹消してしまいたいという欲望があり、人間の中で最も天国に接近していたと解釈されている洗礼者聖ヨハネを洗礼名に選んだ。ヨハネはサロメの舞によって滅する。これだけは絶対に死守されなければならない運命だった。僕がヨハネである限り――サロメによって滅することは――仮に、サロメが実在するとすれば……。
「俺はサロメが欲しいんだ。初めて教会に行った日から、洗礼式であの洗礼名を貰った日から、ずっと彼女のことを考えてきた。サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ、サロメ……何度口にしても俺は彼女の名を呼んだことにはならない。俺はサロメに殺されたいんだ」
「それは私が鈴村さんを壊せばいいってことなの? 」
美紀が心配そうな眼差しで僕の顔を覗き込んだ。僕は今回の冒険が完全に失敗したことに気付いていた。僕の目的は「ポルノとイコンの接合点」を摸索することだった。そこに、スナッフが介在したことで僕の物語は破綻を来たしたのだ。最も異端的なポルノとしてのスナッフは、聖なるものなのだろうか? スナッフで死んだ無名の貧しい少女は、聖なるものを少なくとも我々に残したのだろうか? 僕は人間の尊厳を、一個の掛け替えの無い命を、“踏み躙る”ような「娯楽」が仮に世界に存在したとすれば、それはまぎれもなく“終末の光景”と呼ばれるべきだと考える。そして、それは絶対的に聖なるものでは「ない」。それが聖なるものとして崇拝されては「ならない」。僕が扱っているポルノたちは、薬局に並ぶコンドームと同じで商品に過ぎない。そう、そこにキリスト教神学が入る余地はない。ポルノは排斥され、「永遠の禁書」扱いを受けていて良いのだ。
その時、ふと僕は以前、妹が祖父にレイプされた時の光景を想起した。あの夜、妹はじっと布団の中で静かに泣いていた。もしも、あれが原風景となって今の僕の仕事があるのならば……? 僕が祖父の猥らさを超越するために、そして事件を黙殺した僕の親族たちに復讐するために、教会で洗礼を受けていたとすれば……? だとすれば、ポルノという少年と共に泣いていたのは妹ではなく、僕なのだ。僕は働きながら泣いていたのではないのか? 数知れないトラウマを残す人間の「猥らさ」に対する僕の圧倒的な敵対心と、それを破壊するために必要な絶対的なキリスト教的正統派の信条……このアンバランスな葛藤が、今の僕の業務活動はおろか、僕の人間存在全域を支えているのではなかったか……?
僕は湯船の上で浮遊しているマンコを、ぼんやりと眺めていた。穢れの無いマンコ、どくどくと精液を流していない無垢なるナザレのマンコ。それは閉じられたままの神秘のカーテンであり、けして開けてはならないのだ。開けば僕は祖父の猥らさを越えるほどの猥らさを得るために、何でもするだろう。カトリックとして正常に僕が恋愛的なセックスをする日など果たして訪れるのだろうか? 今のままの僕では、それは不可能だろう。今の僕は極端過ぎるのかもしれない。ポルノを売り、その金で聖書を買うような信徒を、イエス様は何とおっしゃるであろうか? 貴方は一度だけ、確かに僕の涙を拭ってくださった。だから、今度は、人間の「猥らさ」に傷付いた誰かの涙を、僕が拭ってやるべきではないのか……。
僕がそう刹那にやさしさの如きものを魂の奥深くで手繰り寄せた直後だった。美紀は気だるそうに湯船から上がり、僕を見下ろしながら口を開いた。
「じゃあさ、明日ラチろっか? 京都の男の子だからさ、適当に着物とか着せてさ、電ノコで体中に少しずつ穴開けていく作品を撮ろうよ。きっと、その男の子が息絶える瞬間、一番気持ちよく私はイけると思う。びしゃっ! びしゃっ! って鈴村さんの顔面に私の潮を……」
僕は全裸のまま立ち上がり、美紀の頬を強靭な怒りを込めて殴った。天井から、異常なほど冷たい水滴が一滴、過激極まる撮影が終了したばかりの素人女優の最初の涙のように、落ちた。僕は大理石の床面の上で気絶している美紀をほったらかしにして、ロッカーに向かった。旅館の外に出ると、思わず数えたくなるような数の星たちが瞬いていた。それらは無垢で、あらゆる人間の苦しみを越えていた。それらの星たちは、あらゆる人間のあらゆる苦しみを既に体験したがゆえに、その苦しみを声を潜め合うように……。
(Fin)